新しい視点をさぐる 性差
プロラクチンと性差
山路 徹
1
Tohru Yamaji
1
1東京大学医学部第3内科
pp.99-102
発行日 1978年2月10日
Published Date 1978/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205771
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ゴナドトロピンの分泌機構に明らかな性差が存在することはよく知られた事実である。ヒトを含む数多くの動物において,雌は恒常的なLH,FSHの分泌以外に,一定の周期をもって起こるゴナドトロピンの分泌機構を有することが確認されており,この両者が相まって生殖という重要な生体の機能維持にあたっている。ところが雄には前者のいわゆるtonic secretionのみが認められ,しかも雄を去勢した後,これにエストロゲンを投与しても,後者のcyclic secretionをもたらし得ぬ1)ことから,このようなゴナドトロピン分泌機構の性差は視床下部—下垂体の固有な性差に基づくものと考えられている。
プロラクチンの場合はどうであろうか。ラットではプロラクチンの分泌動態にも,やはり性差の存在することが多くの研究老によって指摘されている。すなわち,雌ラットでは発情前期に血中エストロゲン濃度の上昇と一致して,明らかな下垂体からのプロラクチンの放出が起こる2,3)のに反し,雄ではこのような著明なプロラクチンの分泌がみられることはない。ラットをはじめとする齧歯類では,プロラクチンが黄体の機能維持に関与していることを考えればむしろ当然かも知れない。しかしながら,ヒトでもプロラクチンの血中動態に性差が存在するかどうか,あるとすれば,何によっていつ決定されるのかは解決された問題ではない。
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