今月の主題 閉経と臨床検査
巻頭言
閉経と更年期
河合 忠
1
Tadashi KAWAI
1
1自治医科大学臨床病理学教室
pp.347-348
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901485
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人間は,成長期,成熟期,退縮期,老化期を経て死を迎えるライフサイクルを持っている.現在では,日本人は世界で最も寿命の長い民族となり,急速に長寿社会へと突き進んでいる.女性のほうが男性よりも長命であるが,更年期障害は女性に特有なものと思われがちである.しかし,更年期とは,成熟期から退縮期への移行期であって,女性のみではなく,男性にも存在するはずである.たまたま女性で比較的急激な変化が現れるだけのことであり,それが閉経という形でみられ,退縮期への移行が明確であるために問題視されている.
女性のライフサイクルの中で,最も大きな転機となるのは思春期と閉経期である.動物が生存する最大の目的は種族維持と考えてよい.動物の世界では,生命維持のために食欲を満たす行動に次いで,種族維持のために性欲を満たす行動で壮絶な戦いをすることはよく知られている.生殖機能それ自体は個体の生命維持に不可欠の要素ではないが,種族維持にとっては生殖機能が不可欠である.それ故に,女性にとっては生殖機能の始まる思春期,生殖機能の終わる閉経期が精神的にも,身体的にも最も大きな変化を伴うことになる.
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