特集 遺伝と臨床検査
III 染色体異常の診断
5.白血病診断への応用
北村 聖
1
Kiyoshi KITAMURA
1
1東京大学医学部臨床検査医学教室
pp.196-200
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901306
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●はじめに
特定の染色体異常が特定の腫瘍に高頻度に認められる場合には,その染色体異常によって引き起こされる遺伝子の変化が,細胞の腫瘍化の本質に深く関連する要因であると考えられる.白血病などの造血器腫瘍を中心に数多くの染色体異常が知られており,一般にこれらは複雑で疾患と染色体異常に対応を見いだすことは困難である.しかし,これらのうちの一部は染色体異常によって生じる遺伝子変化の詳細が明らかにされ,疾患との対応も明らかにされてきている.白血病の診断は当然末梢血や,骨髄血の形態的観察で可能な場合が大多数である.しかし,その病型診断,あるいは治療後の残存腫瘍細胞の検出などにおいては,いまだ少ない病型ではあるが,これらの染色体変化や遺伝子変化を捉えることで非常に鋭敏かつ正確な診断をすることができるようになってきた.本稿では白血病・悪性リンパ腫にみられる染色体異常と,それに関与していることが明かな癌遺伝子について概説し,それによる白血病の診断について述べる.
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