特集 アレルギーと自己免疫
III.自己免疫疾患
2.自己免疫疾患の検査
3)HLA抗原
(2)HLAクラスII抗原
猪子 英俊
1
Hidetoshi INOKO
1
1東海大学医学部移植学第2
pp.169-171
発行日 1991年11月30日
Published Date 1991/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900835
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はじめに
ヒト主要組織適合複合体であるHLA抗原(humanleukocyte-associated antigen)は,細菌やウイルスなどの外来抗原をT細胞に抗原提示して活性化し,これらの外来抗原を駆逐するための一連の免疫応答を誘導する重要な抗原系である.すなわち,HLA抗原は自己と非自己を識別する遺伝的標識であり,外来抗原が侵入した際に自己であることを主張しているHLA抗原と照合することにより非自己を認識し,T細胞にその情報を伝達する役割を担っている.したがって,免疫系はHLA抗原の遺伝的標識を手がかりとして自身のHLA抗原を発現している身体を自己と認識し,自らの細胞や臓器に対しては決して免疫的攻撃を加えない,いわゆる免疫学的寛容(トレランス)が成立している.これに対して自己免疫疾患は,自己の抗原や細胞を非自己と誤認し,これに攻撃を加えるために生ずる免疫寛容維持の破綻による疾病であり,HLA抗原がその発症に寄与していることは想像に難くない.
主としてクラスI抗原(HLA-A,-B,-C抗原)は,キラーT細胞の活性化に関与し,クラスII抗原(HLA-DR,-DQ,-DP抗原)はヘルパーT細胞の活性化に関与しているが,本稿では,特に自己免疫疾患の発症に深くかかわっているHLAクラスII抗原を取り上げ,その発症の分子機構と診断のためのDNAタイピングについて概説する.
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