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血清中の亜鉛(Zn)が,共存する蛋白や他のイオンとどのようにかかわりを持ちながら存在しているかについては,1970~1974年頃に,A. F. Parisiら,R. I. HenkinとE. L. Girouxらの研究グループが図1に示すようなものとして報告している1~2).すなわち,血中でのZnはいずれも,なんらかのリガンドに結合して流れていて,その主たる内容は66%がアルブミンに,32%がα2-マクログロブリン(α2-M)に,残りの2%ほどがヒスチジンやシステインなどのアミノ酸に,それぞれ異なる強さで結合しており,このうちアミノ酸結合Znとアルブミン結合Znの間には交換性があるが,α2-M結合Znについては,その結合が他のリガンドにおける結合より強いために血流中で他のリガンド結合ZnとZnを高換することはないものと報告している.また,α2-M結合Znは,もっぱら肝細胞内で合成される際に組み込まれ,肝内で代謝されるものであろうとしている.この報告は,その後一般に受け入れられ,最近まで血中Znについての一つの概念になっていたように思われる.
この報告と前後して,われわれも血清中に存在するニッケル(Ni)結合蛋白を分離して,そのおおよその性質を報告した3).1987年夏,われわれはかって報告したこのNi結合蛋白について再度確認する必要が生じて実験に取り組んだが,このときにLC-AASシステムと称して,ファルマシアのFPLCシステムの溶出液のディテクターのーつとして原子吸光分光光度計を,UVディテクターとシリーズに,またはパラレルに結合させて用いた.結果的には,このような金属結合蛋白の分離および分取には,このシステムが極めて有用であることを確かめることができた4).
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