FOCUS
亜鉛欠乏症の診断・治療と血清亜鉛値
倉澤 隆平
1
1東御市立みまき温泉診療所
pp.1324-1328
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207007
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多数で多彩な亜鉛欠乏症1,2)
筆者は2002年に,“多くの医師が考えているよりも,はるかに多くの,多彩な症状の亜鉛欠乏症患者が存在する”ことに気がついた.その症状は,筆者が経験しただけでも,味覚障害はもちろん,食欲不振や舌痛症を含む舌・口腔咽頭症状,褥瘡の発症・治癒遅延をはじめ,ごく一般的な老人性皮膚搔痒症,菲薄脆弱な皮膚や爪などの皮膚症状,多彩な皮膚疾患などがある.さらには,貧血や慢性の下痢など日常の臨床診療でしばしば経験される症状・疾患から,元気度などの精神症状にまで及び,未知なものも含め,まだまだ多くの症状・疾患がある.そのなかには亜鉛欠乏に特異的な症状・疾患もあるが,その他の種々の原因からも発症する一般的症状・疾患もあるため,症状のみで亜鉛欠乏症と診断をつけられないのは自明なことである.なお,体内にほんの数グラムしか存在しない微量元素である亜鉛は生命に必須なミネラルであるが,その欠乏で,なぜこれほど多彩な症状・疾患が発症するかには,いくつかの理由がある.例えば,300余りもある酵素の補因子であるなどの多彩な生体内機能によるが,詳細は成書に譲る.筆者らは2002年の第1症例から,亜鉛欠乏症疑い症例をExcel®で登録し,治療・追跡しており(2017年4月末で1,000例以上),その経験を踏まえて記述する.
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