TOPICS
アンチトロンビンⅢ欠乏症
小濱 寛也
1
,
丸山 征郎
1
1鹿児島大学第三内科
キーワード:
アンチトロンビンⅢ
,
血栓症
,
術前診断
,
ヘパリン
Keyword:
アンチトロンビンⅢ
,
血栓症
,
術前診断
,
ヘパリン
pp.345-346
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900081
- 有料閲覧
- 文献概要
アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は,血中濃度が22~30mg/dlのセリンプロテアーゼインヒビターである.ATⅢは432個のアミノ酸からなり,分子量は55000で,凝固系のそのほかのインヒビター,α1アンチトリプシン,C1インヒビター,ヘパリンコファクターⅡなどと一次構造上25~30%の相同性を示すことから,serpin (serine proteaseinhibitor)とよばれるようになった1).
serpinのなかで最も重要なものはATⅢで,活性化プロテインC,第ⅩⅢ因子以外のほとんどの凝固系のプロテアーゼを阻害するが,特徴的なことは,その阻害作用がヘパリンによって著しく増強される点である.ATⅢのArg (47)周辺がヘパリン結合部位で,ここにヘパリンが結合するとATⅢの三次構造が変わり, Arg (393)―Ser (394)にトロンビンをはじめとする活性化凝固因子が結合しやすくなると想定されている.生体内では,血管内皮細胞上のヘパリン様分子によってATⅢは即時型のインヒビターに変わるものと考えられ,この意味ではATⅢも,ちょうどプロテインCの活性化が血管内皮細胞上のトロンボモジュリンと結合したトロンビンに依存性であるのに似て,血管内皮細胞依存性である.ATⅢは,ヘパリンによって活性が1000倍以上も増強するためヘパリンコファクターともよばれるが,血中にはヘパリンコファクターⅡ(HCⅡ)というserpinも存在する.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.