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はじめに
新生児聴覚スクリーニング(newborn hearing screening:NHS)とは,聴覚障害の早期発見・早期療育を図るために,新生児に対して実施する検査です.先天性難聴の頻度は約1/1,000と多く,遺伝的要因が約60%に関与しています.言語獲得には臨界期があるため,先天性難聴児において最も重要な課題は言語習得であり,それには早期発見と早期介入が不可欠なのです.2000年にJCIH(Joint Committee on Infant Hearing)より,“全ての新生児に聴力スクリーニングを,生後3カ月までに聴力学的評価と医学的評価,難聴が確認された乳幼児は,生後6カ月までに,乳幼児の難聴や聴覚障害に精通した医療や教育の専門家による介入を受ける「1-3-6ルール」に従うこと”が提言されました1).世界保健機関(World Health Organization:WHO)が,新生児期・小児期・成人期・老年期といったライフサイクル別の難聴への取り組みを強化したことに呼応して,わが国でも,難聴者が誰ひとり取り残されず,生き生きとこころ豊かに暮らすことのできる社会の実現に向けて難聴対策推進議員連盟が提言した“Japan Hearing Vision”をまとめ,これに沿って,2020年より政府の取り組みが進んでいます.この“Japan Hearing Vision”では,政策の柱の1つとして“全ての新生児に対して新生児聴覚検査の実施と全額公費負担を実現することにより,全ての新生児が新生児聴覚検査を受けられる体制を構築すること”,また中等度以上の難聴では言語獲得に影響があることから,“新生児期,小児期の難聴児支援として難聴を早期に発見し,医療・療育・教育を適切な時期に提供することで言語能力を獲得できること”を掲げています2).
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