増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見
1章 腹部エコー
腸閉塞(イレウス)
山下 安夫
1
1東北労災病院超音波診断室
pp.384-388
発行日 2020年4月15日
Published Date 2020/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542202325
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疾患の概要
腸閉塞(イレウス)とは,何らかの原因で腸管内容の通過が障害された状態と定義される.従来,腸閉塞とイレウスは同義語として用いられてきたが,「急性腹症診療ガイドライン2015」1)において,“腸閉塞”と“イレウス”を区別することが提案され,“腸管が機械的に閉塞した場合を腸閉塞とし,機能性(麻痺性)のものをイレウスと呼ぶ”と定義された.
腸閉塞は,血流障害を伴わない単純性腸閉塞と血流障害を伴う複雑性腸閉塞(広義の絞扼性腸閉塞)に分類される(図1).単純性腸閉塞の原因は,小腸では開腹術後や炎症(Crohn病など)による癒着が最も多く,大腸では腫瘍が大部分を占める.一方,複雑性腸閉塞の原因は,小腸では開腹術後の索状物(バンド)による絞扼,ヘルニア嵌頓,腸重積,腸軸捻転など,大腸では乳児の腸重積と高齢者に好発する軸捻転が主なものである.イレウスは腸管の蠕動運動の低下により腸管内容物の通過障害をきたした状態で,麻痺性イレウスと痙攣性イレウスがある.麻痺性イレウスは開腹術後が最も多く,そのほかには種々の原因による腹膜炎,腹腔内出血などが原因で発症する.痙攣性イレウスの原因は,手術や外傷,神経障害,中毒などであるが,頻度は極めて低い.
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