今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集
がんゲノム自体に関する用語
柳田 絵美衣
1
1慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット
キーワード:
生殖細胞系列遺伝子変異
,
体細胞遺伝子変異
,
がん遺伝子
,
がん抑制遺伝子
,
多段階発がん
,
ドライバー遺伝子
,
パッセンジャー遺伝子
,
突然変異
,
2ヒット発がん
,
腫瘍内不均一性
,
heterogeneity
Keyword:
生殖細胞系列遺伝子変異
,
体細胞遺伝子変異
,
がん遺伝子
,
がん抑制遺伝子
,
多段階発がん
,
ドライバー遺伝子
,
パッセンジャー遺伝子
,
突然変異
,
2ヒット発がん
,
腫瘍内不均一性
,
heterogeneity
pp.914-923
発行日 2019年8月15日
Published Date 2019/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542202101
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生殖細胞系列遺伝子変異,体細胞遺伝子変異
生殖細胞(精子や卵子)に遺伝子変異が存在するものを“生殖細胞系列遺伝子変異(germline mutation)”,生殖細胞以外の細胞(体細胞)に存在する遺伝子変異を“体細胞遺伝子変異(somatic mutation)”として区別する(図1).生殖細胞系列遺伝子変異は子どもや孫など次世代に受け継がれる(遺伝する)可能性があるが,体細胞遺伝子変異は遺伝しない.つまり,体細胞遺伝子変異はその人個人に起こるものであり,“ケガ”のようなものである.例えば,道で転んで足を擦りむいたとしても,そのケガをした人から生まれた子どもに,その足のケガは遺伝しない.体細胞遺伝子変異とは,このケガと同じように,その人個人だけがもつものである.
ヒトは同じ遺伝子を2本もち,1本は父親(精子)から,もう1本は母親(卵子)から受け継いでいる.遺伝子修復に関連する遺伝子(特にがん抑制遺伝子)では,1本の遺伝子に変異が起こり機能を喪失していても,もう1本の遺伝子が正常であり機能していれば,がん化を抑制することが可能である.しかし,遺伝子に変異を生じている精子または卵子が受精した場合,生まれつき全身の細胞内の1本の遺伝子に変異(生殖細胞系列遺伝子変異)をもつことになる.つまり,正常に機能する遺伝子が最初から1本のみであり,スペアの遺伝子がない状態となっているため,正常に機能する遺伝子に変異が生じると,がん化する(図2).
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