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■“心臓のお助けホルモン”であるナトリウム利尿ペプチド(NP)
脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド〔brain(B-type)natriuretic peptide:BNP〕は,心筋ストレスのバイオマーカーとして,神経体液性因子のスクリーニング検査,心不全の診断・重症度評価,治療効果判定および予後予測のために,実臨床で広く活用されている1).また,心不全ばかりでなく心筋梗塞の入院加療後においても,退院時の血漿BNP濃度(血中BNP値)が180pg/mL(Log BNP 2.26pg/mL)を超えていると,その後の心臓死が有意に多いという報告もあり,予後予測に有用である2).ナトリウム利尿ペプチド(natriuretic peptide:NP)は,いわゆる“心臓のお助けホルモン”として臨床上で理解されている.特にBNPは心筋内で産生され,過剰に亢進した神経体液性因子に拮抗して,ナトリウム利尿による体液量減少,血管拡張などの効果をもたらす.心不全の原因は心筋梗塞,心筋症,弁膜症などさまざまであるが,心不全におけるBNP上昇は,これらの病態の変化を反映している.
なお,BNPの基準値は18.4pg/mL以下であるが,実臨床ではなんら心不全の症状がみられなくても,この値を超える症例が散見される.筆者らは,多施設共同研究J-ABS(Japan Abnormal BNP Standard)3)を行い,新たな心機能障害診断のためのカットオフ値を,60歳未満では40pg/mLとして報告した(60歳以上群の95パーセンタイル値は139.8pg/mL).この研究では,明らかな心疾患がなくても,加齢により血中BNP値は上昇することが示された.同時期に日本心不全学会より,「血中BNP値やNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について」4)のステートメントが発表され,同様にBNP 18.4pg/mL以上で40 pg/mL〔BNP前駆体N端フラグメント(N-terminal fragment of brain natriuretic peptide precursor:NT-proBNP)では125pg/mLに相当〕以下は,心不全の可能性は低いが可能ならば経過観察と設定された.
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