Crosstalk 地域医療×臨床検査・7
単調な世界に現れるシグナル
寺裏 寛之
1
1自治医科大学地域医療学センター地域医療学部門
pp.831
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201672
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岩手県で地域医療を実践してきた.本年度からは場所を変え,自治医科大学で地域医療に携わることになった.さて,岩手県立千厩病院での診療経験に戻ろう.地域医療の醍醐味は,慢性疾患の継続的管理の妙にある.慢性疾患の診療を単調な世界と呼ぶ人もいる.しかし,そこにはピットフォールもあり,気は抜けない.慌てることもある.普段,付き合いのある受診者だからこそ,まさか病気ではない,病気であってほしくないという心理も働く.いつもと様子が違うことを察知できるか否かが重要になってくるのだ.
診察や問診でのサインは,それを察知するシグナルとして重要だ.顔色,声のトーン,皮膚の色調,体重の変化,浮腫の有無,身だしなみを観察しながら犬との散歩の様子,入浴の頻度などを尋ねつつ受診者と対話する.Willam Osler1)が言ったように,“Medicine is an art based on Science.”を感じる瞬間だ.いつもと違うのではないか,という医者の第六感に‘客観性’をもたせることも必要であるが,その手掛かりを与えてくれる1つの手段に臨床検査がある.
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