元外科医のつぶやき・25
血液検査にまつわる小話
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.75
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201084
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“外科を極めるには,診断から治療までの全てに長じていなくてはならない”と,40年前の外科研修医時代に訓示を受けた.そこで,手術は当然として,内視鏡検査や血管造影検査などの諸検査,麻酔,術後管理,癌化学療法,ターミナルケアなども学習した.さらに,血液一般検査なども自分自身でできるように取り組んだものである.
外科医にとって,外傷や手術後には随時,貧血の程度を知りたいものである.研修医時代,昼間は臨床検査技師が測定してくれたが,夜間や休日は不在のため,検査は研修医の仕事であった.採血した血液を検査室に運び,検査が容易なヘマトクリット値を測定した.血液をキャピラリーに吸い取り,3,000回転5分間遠心し,血球成分の比率を特定の分度器で読む.その結果で出血量を推定し,輸血した.また,採血した血液の色,さらには患者の爪の赤みや顔色でヘマトクリット値を推定し,検査結果に近いと一人ほくそ笑んだ.今では血液を自動測定器に入れるだけであり,ヘマトクリット値の測定方法さえ忘れがちとなった.
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