元外科医のつぶやき・6
血液の適正使用
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.593
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200346
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血液は人体の一部であり,輸血に用いる血液は献血に由来する.したがって,貴重な血液を有効利用する必要があるが,38年間に及ぶ外科医時代,血液を常に適正に使用してきたか,大いなる疑問を感じている.
私が母校で研修していた昭和50年代後半,肝切除時には新鮮凍結血漿を輸血することが推奨され,大量の新鮮凍結血漿を使用したものである.また,感染例ではグロブリン製剤が安易に使用され,さらに,アルブミン製剤は低蛋白血症の特効薬として推奨された.使用する血液を国内で集められないため,世界中から血液製剤を買い求め,アルブミンに至っては全世界の1/3をわが国で消費した.そして,金満国日本が人体の一部である血液を買いあさっていると,国際的に大いに批判された.当時,わが国は好況な経済の下,医療費は原則無料で,患者も医療側も医療費にはあまり関心をもたなかった.しかし,日本経済に陰りが生じ,また医療費増大に伴い世界に冠たる医療制度の維持が困難となった.そこで,医療費抑制が行われるようになった.
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