増刊号 心電図が臨床につながる本。
Ⅱ章 波形からみた心電図[1] 心臓の器質的疾患Plus
QRSの異常—R波の高低
水上 和也
1
,
横式 尚司
1
,
筒井 裕之
1
1北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学
pp.1187-1192
発行日 2016年10月30日
Published Date 2016/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200980
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Overview
QRS波形は心室筋の脱分極を表す.正常では右室壁より左室壁が厚く,心室筋の興奮は全体として左室成分が強いため,QRSの興奮の主たる方向は立体的には左やや後下方に向かう形となる.そのため,肢誘導ではR波はⅡ誘導が最も大きく,Ⅰ誘導,aVF誘導のR波が高くなる(図1,→).
胸部誘導では左側にQRSベクトルが向かうことを反映し,V1のR波は小さくS波が深い,V5,V6ではR波が大きく,S波が小さい(図2,→).QRS波の高さは標準肢誘導では2点間の相対的電位差を,胸部誘導や単極肢誘導ではWilsonの結合電極を不関電極とした電位波高によって生じる.そのため,QRS波の振幅に影響を与える因子としては心臓起電力の大きさ,心臓周囲組織,誘導電極の位置などが挙げられる.
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