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皆さまもご存じの通り,心電図検査の歴史は古く,Willem Einthovenが1903年に心電図の基礎を構築し,1924年にノーベル賞を受賞しました.このときの校正電圧と紙送り速度は現在も変わらず用いられています.それから1世紀が過ぎた現在では,簡便で非侵襲的に検査できるようになったことによって,循環器系のスクリーニング検査として広く用いられています.
多くの医療関係者が勉強し判読技術を身に付けようとしていますが,一方で,苦手だとおっしゃる読者の方も多いのではないでしょうか? 生化学や血液などの検体検査の場合は,結果の数字の高い・低いなどから体の状態を判断することができます.それに比べると,顕微鏡で判断する血液像や細胞診,心電図,エコーやMRIなどは,画像や波形から判断をしなければならず,苦手意識をもってしまうことでしょう.一昔前までは,難解な波形を上司に聞くと,上司が“これは,VTだ!”といえば,そのように判断していたでしょう.判読が難しいほど,客観的判断より主観的判断が大きくなってしまいます.今日では,このような状況では,上司もしっかりとその波形のエビデンスに基づいて,なぜVTなのかをしっかりと説明できなければなりません.また,部下も上司といっしょにディスカッションしていける環境でなければならないと思います.心電図を判読する際には苦手意識をもたずに,ぜひ,肩の力を抜いて眺めましょう.しかし,漠然と心電図を眺めるのではなく,わかることから判読(心拍数や各種正常値の計測など)していくと,おのずと見えてくるものがあるのではないでしょうか.まず本書を読んでいただき,苦手意識を克服してほしいと思います.
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