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この原稿は,東京でも桜の開花宣言が出た時期に書いています.少し前の3月11日前後には,各テレビ局で一斉に東日本大震災の特集が組まれ,もう5年もたったのかと,あらためて感じさせられました.原発事故のあった福島をはじめ,全体的に復興の遅れが目立ち,津波被害の恐ろしさを再認識した次第です.地震だけであれば,復興のピッチはもう少し速かったろうと思いますし,原発事故も起きなかったと思われます.特集番組をみながら,津波被害の恐ろしさは,教訓として後世に残すべきと感じました.
さて,本号の第1特集は「もっと知りたい! 川崎病」です.実は,川崎病には思い出があります.私は医師免許取得後すぐに臨床検査の分野に進みましたので,医師としての診療経験がほとんどありません.ただ,1年弱の期間,学生時代のクラブの先輩に誘われて小児科で研修を行いました.これがほとんど唯一の診療経験ですが,このときは川崎病が大流行した年でした.中村先生の“川崎病の疫学と病態”をみると,1982年のことだったと思います.そのため,川崎病の症例をたくさん経験しました.当時は川崎病の原因究明が小児科領域の大きな課題でしたが,今回の特集を読むと,まだ原因は不明とのことであり,この疾患の難しさが感じられます.また,私は日赤医療センターの染色体検査室に知人がおり,同施設を訪ねた際,知人の紹介で川崎富作先生にお目にかかる機会を得ました.川崎先生はもちろん“川崎”病の発見者であり,当時は日赤医療センターの小児科部長だったと思います.すでに有名人でしたので,面会の際は大変,緊張したことを覚えています.30年前も冠動脈の障害は川崎病の重要な合併症でしたが,その診断に心エコーが大活躍することになるとは,当時は知る由もありませんでした.
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