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今年も,多くの台風がやってきた.台風の勢力を表すのに用いられている中心気圧はヘクトパスカルという単位である.しかし,昔はミリバールという名で知られていた.私と同年代の方々には懐かしい響きであろう.1991年にミリバールからヘクトパスカルに変更されたが,これは国際単位に統一するための措置であった.臨床検査業界も基準値の統一やパニック値の統一など,“統一風”が吹いている.しかし,圧力の単位で申し上げれば,血圧の単位はパスカルにはなっていない.血圧の単位を統一するには大きな壁がある.台風の場合は,単位を変更しても,数字は変わらなかった.例えば,955ミリバールは955ヘクトパスカルである.しかし,血圧の単位を変更する場合は数字が大きく変わってしまう.一般国民の多くが血圧をmmHgで把握していることは国際単位の統一化に大きく影響する.所管する経済産業省は2013年に生体内圧力に関しては恒久的に現状通りmmHgを法定計量単位とすることと改正した.このことから,現在も血圧の単位は変わっていない.
今月号の特集では,寄生虫疾患を取り上げた.人は寄生虫に感染する機会が増えている.これは国内外を問わない.蚊やダニの媒介によるものや,肉の生食によるものであり,容易に自己防衛できるものから感染防御をしていても感染してしまうものまでさまざまである.肉の生食といえば,2012年7月に牛の生レバーの販売・提供禁止と,今年6月の豚の生レバーの販売・提供禁止があった.牛がだめなら,豚をという状況でE型肝炎による感染者が増加したためのものであった.私はレバ刺が苦手なので問題ないが,愛好者にとっては残念な措置であろう.日本文化として,生食文化がある.刺身をはじめとして,卵,牛乳などである.これはわが国の衛生環境や食品管理体制が諸外国と比べ良好な状態であるためといえよう.しかし,それをもってしても防げない感染症があるのも事実である.このように厚生労働省は規制をし,監視体制を強化している.一方で,このほど文部科学省は,小学生に実施していた蟯虫検査を本年度で廃止するとした.これは感染率が低下しており,健診の役目を終えたためのものと考えている.このように感染症は注目されれば規制を強め,低下すれば管理体制を弱める.これらは医療経済学と大きく関係しているのであろう.
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