遺伝医療ってなに?・8
米国の学会で感じたこと
櫻井 晃洋
1
1札幌医科大学医学部遺伝医学
pp.828-829
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200400
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今年の3月に米国ユタ州ソルトレイクシティーで開催された,米国臨床遺伝学会(American College of Medical Genetics and Genomics)の学術集会に出席してきた.ソルトレイクシティーは1840年代に末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)徒が入植してできた街で,今でもユタ州住民の7割はモルモン教徒だと聞いている.モルモン教は本来,教義で飲酒を禁じているので,スーパーではワインや蒸留酒を置いていない.筆者にとっては幸いなことにビールは普通に買えるが,陳列棚にまるで危険物であるかのような注意書きがある.いかにも保守的であまり面白みはないが,(米国にしては)安全な印象のする街である.長野オリンピックの4年後の2002年には冬季オリンピックも開催され,最近はスキーリゾートとしての知名度も上がっているらしい.
モルモン教徒は子だくさんで,かつデータベース化された家系図情報を備えていることから,遺伝学研究には理想的な集団で,教団も研究に積極的に協力してきた歴史がある.そんなわけで,ユタ大学は過去も現在も人類遺伝学のメッカともいうべき大学なのである.家族性大腸ポリポーシスの原因遺伝子APCを発見した中村祐輔シカゴ大学教授も,遺伝性乳癌卵巣癌の原因遺伝子BRCA1を発見した三木義男東京医科歯科大学教授も,これらの研究をユタ大学で行っているし,それ以外にも,日本の人類遺伝学をけん引する多くのリーダーたちが,かつてこの大学に留学していた.ついでにいえば,BRCA1/2の特許を取得したMyriad Genetics社の本社も,ユタ大学キャンパスのすぐ隣にある.
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