今月の表紙
腹水に生息するマリモ(癌細胞)
島田 達生
1,2
1大分大学
2大分医学技術専門学校
pp.494
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200324
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北海道の阿寒湖に生息するマリモは,国の特別天然記念物に指定されている.藻の一種であるマリモは,比較的寒い地方の湖沼に沈む緑色の神秘な球体で,大きさ約30cm.じっと見ていると,心が和らぎ,癒やされるという.
しかし,写真の細胞を見ても,心が癒やされることはなく,むしろ怒りを感じる.これは,腹水中の大腸癌細胞である.細胞表面から短い微絨毛が派生し,極めて活動的であることを示唆している.胃や大腸の癌細胞が漿膜を破り,腹膜腔に溺れ落ち,腹膜に付着し,細胞分裂を繰り返し,癌細胞塊を造る.このような状態が種をまいたように見えるので,腹膜播種といわれる.腹水を遠心分離すると,たくさんの癌細胞が存在することがある.これが癌性腹水.
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