今月の特集1 1滴で捉える病態
扉
山内 一由
pp.391
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200302
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一般に分析学でいう1滴は数十μLです.微量ピペットの1滴なら,さらにその1/10以下になります.メートル単位の空間で日々生活している私たちにとっては想像もできないほど狭い世界ですが,含まれている生体情報は膨大です.例えば,1μLの血液中にはグルコースだけでも約3.0×1015個にも及ぶ数の分子がその他の多様な生体分子とひしめき合い,数百万個以上存在する血球成分の間隙を埋め尽くしています.1つ1つの細胞に目を向ければ,細胞内も種々のタンパク質や核酸をはじめとする多彩な生体成分で満たされています.そこにはいまだ機能が明らかとなってない成分も存在するはずです.わずか1滴の生体試料であってもあらゆる病態を捉える可能性を秘めているのです.検体の微量化は臨床検査における重要な課題ですが,たった1滴の試料を用いた臨床検査の確立はその究極の目標といえます.その実現は医療に革命的な進歩をもたらすに違いありません.
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