元外科医のつぶやき・2
輸血と感染
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.194
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200244
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輸血による副作用にはさまざまあるが,重篤な副作用として感染が挙げられる.輸血による感染を防止するため,日本赤十字社がいかに取り組んできたかを紹介する.
わが国における輸血の歴史をひもとくと,1930年,ピストルで狙撃された浜口首相が供血者から採取した血液を直ちに輸血したことを契機に,以後輸血が普及した.そして1948年,東大病院での輸血による梅毒感染が大きな社会問題となり,1952年,日本赤十字社による血液事業が開始された.しかし,売血による商業血液銀行も認可され,献血制度は低迷を極めた.1964年,ライシャワー駐日米国大使が輸血で肝炎を発症したことを契機に,献血が強力に推進された.なお当時は輸血患者の半数が肝炎を発症し,素手で手術を行う外科医は肝炎を発症して初めて一人前とさえいわれた.そこで1972年,HBs(hepatitis B surface)抗原検査が,そして1989年,C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)抗体検査が導入され,肝炎発症者は激減した.なお1974年,輸血用血液は全て献血で供給されるようになったが,その後も製薬会社による血漿分画製剤用血漿の有償採血が行われた.しかし,輸入血液製剤によるエイズウイルス〔ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)〕感染が問題となり,1990年,売血制度は完全に廃止された.なお現在でもいまだアルブミン製剤の4割強は,海外の売血制度で集められた血液で製造されている.
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