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小学生の頃,雑誌の懸賞で手に入れた顕微鏡(100倍率程度)を用い,植物の葉脈やたまねぎの表皮細胞,昆虫の羽などを観察した経験が,私を臨床検査の道に進めさせた.40数年前に直面した臨床検査は,まさにミクロの世界が基本であり,連日,多種多様な尿中細胞を学び,多くの虫卵や原虫を速やかに捉え,100%好酸球性白血病を見つけ,ガフキー10号の真っ赤な標本にも出会えた.これらの功績は,職場の先輩や教育機関の先生方の指導の賜物と感謝しているが,何より頼りにしたのが各種専門書であり,数少ない写真集を食い入るように見入ったものである.
本書は,顕微鏡で探る多くの疾患を対象とし,診断に直結できる鏡検所見をそろえ,検査手技,鏡検像の特徴解説,病態解析に至るまで簡潔にまとめており,冒頭では,顕微鏡の原理と使い方,顕微鏡写真撮影のコツをわかりやすく概説している.続いて部門別に紹介されているが,微生物検査では,鏡検で判断できる感染所見や薬剤影響による変化などの概説,主な原因微生物の鏡検像の特徴解説に目を奪われた.一般検査では,尿沈渣,寄生虫,穿刺液などの標本作製法,染色法,症例と鏡検所見が紹介され,昔懐かしい虫卵など貴重な写真に出会えた.血液像では,末梢血,骨髄の採取,標本作製,染色原理,手技が概説され,各論では健常者の血液像を把握することから始まり,異常血液像,造血器腫瘍のWHO分類が紹介され,専門知識修得に最適と思えた.細胞診では,細胞所見や判定基準の基礎解説,一般的塗抹法,集細胞法,各種染色法の手技がわかりやすく記述され,各論では疾患別症例の鏡検像とその細胞特徴の解説がそろえられており,鮮明な画像に見入った.そして病理では,細胞診,末梢血,尿沈渣,細菌検査との違いが解説され,標本作製法,染色法,迅速診断,腫瘍診断を適正に表し,幾何学模様を連想させる鏡検像を堪能した.さらに,随所挿入のCOLUMNもまた,適切なアドバイスとして楽しめた.
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