今月の主題 MDS(骨髄異形成症候群)
巻頭言
MDS診療に臨床検査が貢献するために
山田 俊幸
1
Toshiyuki YAMADA
1
1自治医科大学臨床検査医学
pp.1309
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103247
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臨床検査(検体検査)は,機械化の発展により,検査する個人の技術,特性にとらわれることのない,客観的に結果が得られるものがほとんどを占めるようになった.しかしながら,おそらく今後しばらくは主観的判定能力が求められる検査として残るのが細胞や組織の鏡検判定であろう.血液造血器腫瘍分野では,表面抗原と遺伝子核酸の解析による情報が診断にほぼ必須なものになってきているが,今回のテーマである骨髄異形成症候群(MDS)の診断の基本は,あくまで普通染色標本の細胞異型の判定である.そういう意味ではMDSは,臨床検査技師,臨床検査医がその能力を発揮できる,または発揮しなければいけないターゲットと言える.
しかし,細胞異型の判定はかなり曖昧なものという印象が強い.そのような想いを受け,2007年に厚生労働省の研究班(主任研究者:自治医科大学小澤敬也教授)から,不応性貧血(骨髄異形成症候群)の形態学的診断基準に関する指針が出された.MDS診断標準化の大きな一歩と期待され,この指針の理念を日常検査で具現化していく努力が必要となろう.ところで注目すべきは,“偽Pelger核異常”と“顆粒球乏顆粒”という末梢血でも観察される異常が代表的な所見として認定されたことである.ほかにも大きめで不ぞろいの赤血球,好中球の過分葉,巨大血小板など,末梢血でMDSを疑える所見は少なくない.骨髄像検査を実施していない施設,個人においても末梢血から得られる情報を積極的に報告していただきたい.
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