今月の主題 IgG4関連疾患
巻頭言
IgG4関連疾患のルーツと広がり
熊谷 俊一
1,2
Shunichi KUMAGAI
1,2
1神鋼病院膠原病リウマチセンター
2神戸大学大学院立証検査医学講座
pp.729-730
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102690
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近年,免疫疾患の中で,臨床検査の名前がついた新しい疾患概念が発見されている.抗リン脂質抗体症候群しかり,抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody;ANCA)関連血管炎・腎炎しかりで,その発見に臨床検査が重要であったことは言うまでもない.今回のテーマである“IgG4関連疾患”という新しい疾患概念もまたしかりであるが,日本から発信され世界で注目されているという点と,その発見に臨床検査技師のするどい観察がかかわっているという点で,特筆すべきである.そのあたりについては,総論の中の「IgG4関連疾患の概念」(浜野論文)をまずご一読いただきたい.
IgG4関連疾患の存在は,1892年にポーランドの外科医Mikuliczにより報告された,両側の涙腺と唾液腺腫脹を特徴とするミクリッツ病の症例にさかのぼる.1933年にスウェーデンの眼科医Sjögrenがドライアイを伴い涙腺炎や唾液腺炎を生じる疾患として,シェーグレン症候群を報告した.その後,ミクリッツ病は組織学的な検討からシェーグレン症候群の一亜型とみなされ,ミクリッツ病という病名はほとんど使われなくなったが,本邦ではミクリッツ病とシェーグレン症候群の異同についての議論は続いていた.2004年,ミクリッツ病は抗SS-A抗体や抗SS-B抗体は陰性で,IgG4が高値であるのみならず病理組織でもIgG4陽性形質細胞浸潤が著明であり,ステロイドがよく反応するなど,シェーグレン症候群とは異なりIgG4関連疾患であることが結論された(山本論文,正木論文).
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