映画に学ぶ疾患
「アバター」から学ぶ感染症と人類の進化
安東 由喜雄
1
1熊本大学大学院生命科学研究部病態情報解析学分野
pp.1030
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102400
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人類の歴史は,侵略と略奪の歴史と言っても過言ではない.アメリカ人の西部開拓史がまさにそうである.ヨーロッパからの移民たちはアメリカ建国とともに,西へと開拓を進めるが,同時にインディアンへの侵略の歴史が始まる.インディアンの中には,移民に好意的に接し,開拓に手を貸した者も少なくなかったし,彼らの知恵が移民の生き抜く力ともなっていった.しかし,どんな時代や地域でも,1つの土地に2つの異民族が仲良く暮すことはできない.アメリカインディアンは武力によって不当に侵略され続けていった.これに拍車をかけたのが,ヨーロッパ人の持ち込んだ数々の感染症である.ウイルスや細菌に対して抗体をもたないインディアンの人口は感染症によっても激減し,最終的には推定1,000万人いたうちの実に95%が死に絶えたと言われている.
人類は性懲りもなく古代からこうした“侵略”の歴史を繰り返してきた.21世紀になってもこうした略奪と侵略は止まらない.“きっと宇宙までいっても,ヒトという生物はこうした営みを続けるのだろう”,そんな監督のつぶやきが伝わってきそうな映画が「アバター」(ジェームズ・キャメロン監督)である.
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