今月の主題 糖尿病の病態解析
巻頭言
糖尿病治療の新時代と糖尿病の病態解析
戸塚 実
1
Minoru TOZUKA
1
1東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科先端分析検査学分野
pp.968-969
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102378
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糖尿病は一般に最もよく知られた疾患の1つであろう.厚生労働省の「2007年国民健康・栄養調査」によると,本邦では“糖尿病が強く疑われる人”が約890万人,“糖尿病の可能性が否定できない人”が約1,320万人いると推計されている.全人口の6人に1人は,糖尿病と何らかのかかわりがあるという驚くべき調査結果である.まさに国民病とも言うべき糖尿病への対策は,医療面に限らず,本邦の重要課題の1つであると言っても過言ではない.
糖尿病の診断そのものに関与する臨床検査は空腹時血糖検査,グルコース負荷試験(OGTT),あるいはHbA1c測定など広く世間に認識されている.それらの検査はいずれも確立された方法によって,どこの検査施設でも比較的容易に実施可能である.すなわち,糖尿病の診断そのものは比較的容易といえる.しかし,糖尿病の病態を正確に把握するための臨床検査は必ずしも十分であるとは言えない.近年,多くの研究者の努力によって糖尿病発症の分子機構をはじめとする膨大な新知見が明らかにされ,糖尿病の本質が解明されつつある.それに伴って治療も飛躍的に進歩していることに驚かされる.従来,糖尿病は治らない病気と理解され,不幸にして糖尿病と診断された人は,いかにうまく糖尿病と付き合っていくかが主要テーマに据えられていた.しかし将来,糖尿病が治る病気になることも夢ではないように思われる.
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