2頁の知識
糖尿病の新らしい治療
阿部 正和
1
1慈恵医大・生理
pp.52-53
発行日 1957年1月15日
Published Date 1957/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910269
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糖尿病の原因はと問えば,誰しもインシユリンの欠乏によつて起ると答えるであろう。しかし,糖尿病の病因は,そんなに簡単なものではない。糖尿病患者の血糖(血液内に含有されるブドウ糖で正常値は0.1%)は高く,尿の中には常にブドウ糖が排泄されているということぐらいは素人でも理解している。この血糖が高いという現象を理解するためには,生体がどのようにして血糖を正常値に維持するべく調節しているかを知らなければならない。
血糖の源は御承知のように肝臓内に貯えられているグリコーゲンである。このグリコーゲンが分解して始めて血液中にブドウ糖が放出され,末梢の筋肉に運ばれる。ここで,ブドウ糖は燃焼してエネルギーをつくるわけである。(第1図)従つて,もしも肝臓におけるグリコーゲンの分解が正常以上に亢進したり,あるいは,筋肉におけるブドウ糖の利用が障害されたりすると血糖が高まつてくるわけである。ところでインシユリンというホルモンは,この後者,すなわち筋肉におけるブドウ糖の利用を促進する作用をもつている。いまインシユリンを生体に注射するとこのようにして糖の利用が促進されるので,血糖は低下してくるわけである。このインシユリンに体の中には血糖を上げようとするホルモンが,体の中にはいくつか存在している。これらのインシユリン拮抗ホルモンとインシユリンとの関係を図で示してみよう。(第2図)
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