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この数年間でオートファジーの研究は爆発的に進展し,論文,学会,セミナーなどでオートファジーという言葉を耳にする機会も大変増えた.オートファジーの分子機構が明らかになるとともに,オートファジーが非常に多くの研究分野の現象と関連するというのがその大きな理由であろう.基礎的な細胞生物学はもちろんのこと,栄養・代謝学,免疫・感染学,腫瘍学,炎症学,再生・発生学など,例を挙げればきりがない.最近では,週刊少年ジャンプの格闘技系(?)の漫画にも「飢餓によって誘導されるオートファジー」が登場したほどであり(週刊少年ジャンプ[トリコ/島袋光年]),オートファジー研究の広がりには文字通り目を疑わせられる.
しかし,その一方でオートファジーの正確な理解がまだ遅れているのも事実であろう.ひとつの例としてオートファジーと細胞死との関連が挙げられる.アポトーシス研究によってもたらされたひとつの結果は,細胞死にはカスパーゼに依存しない非アポトーシス細胞死が存在するということであった.そのような細胞には正体不明の空胞がしばしば存在するため,さらにはオートファジー(自食作用)という名前のもつ危険な響きからか,オートファジーが細胞死の実行因子であるという考えが一気に広まった.実験的根拠が乏しいままに,オートファジー=細胞死という図式が多くのトップジャーナルの総説に書かれるようになった.しかし,生理的条件下でオートファジーが細胞死を引き起こすことは非常に稀であることが徐々に理解されるようになり,現在では「オートファジー性細胞死」という名称は多くの場合不適切に使用されているという反省に至っている1).別の例としては,オートファジーを活性化することによって,永続的に栄養やエネルギーを産生できるのではないかという誤解である.オートファジーによるアミノ酸産生は過剰な自己分解による一時凌ぎであり,長期にわたる飢餓に対抗することはできないはずである.この点では,前述の週刊少年ジャンプの記載は見事に的を射ていた.
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