特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査
各論
2.微生物別の種類別にみた施設内感染制御
5) 原虫・寄生虫・医動物 シラミ
松岡 裕之
1
Hiroyuki MATSUOKA
1
1自治医科大学医動物学部門
キーワード:
吸血昆虫
,
刺咬反応
,
顕微鏡観察
Keyword:
吸血昆虫
,
刺咬反応
,
顕微鏡観察
pp.1445-1448
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102141
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はじめに
シラミは翅をもたない昆虫である.吸血源の体毛や衣類に住み着いて常時吸血をするもの,ベッドに潜んで夜間に吸血に来るものなど種類により独自の行動をとる.シラミには疾病の媒介をするものもあるので注意を要するが,被害の主たるものは被刺咬部位に生ずる痒みである.吸血動物は吸血に当たり,血管を拡張させるためまず唾液を注入する.唾液には血管拡張物質,止血物質,麻酔物質など多くの生理作用をもつ物質が含まれるが,何回か刺咬を受けるうちに宿主側に唾液に対するIgE抗体が産生され,I型アレルギーが生ずるようになる.
蚊による刺咬反応はよく知られているが,典型的なI型アレルギー反応である.すなわち刺咬を受けて数分後に,刺咬部位が発赤し,中央部に浮腫(膨疹)を生ずる.痒いと感じるのはこうなってからで,主犯の虫はまんまと吸血を済ませ場所を移動してしまった後である.蚊に比べシラミは吸血量が少なく,また,1か所当たりに注入する唾液量も少ないので,膨疹をきたすほど強い皮膚反応は起きない.しかし頻繁に刺咬を繰り返すことと,繁殖が早いため個体数が増えて,多数の刺咬が起きるため,寄生を受けた者に広範な痒み被害をもたらす.
ヒトに被害を及ぼすシラミには,アタマジラミ,コロモジラミ,ケジラミ,トコジラミなどがある.以下にその形態や特徴を述べる.
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