特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査
各論
2.微生物別の種類別にみた施設内感染制御
3) 真菌 ニューモシスチス・イロベツィ
安岡 彰
1
Akira YASUOKA
1
1長崎大学病院感染制御教育センター
キーワード:
免疫不全
,
飛沫感染
,
空気感染
Keyword:
免疫不全
,
飛沫感染
,
空気感染
pp.1391-1394
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102129
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はじめに
Pneumocystis jiroveciiは長い間Pneumocystis cariniiと称され,原虫か真菌かを議論されてきた.1990年代以前は生活環の類似性や抗原虫薬であるペンタミジンが有効なことなどから原虫と分類されることが多かった.1988年にribosomal RNA遺伝子の相同性が真菌に近いことが報告1)されて以降,遺伝子レベルや微細構造,保有酵素の類似性などいずれも真菌に近いことを示すデータが得られ,Pneumocystisは真菌と分類されるようになった.
Pneumocystisは種々の哺乳類の肺から発見されており,形態的にはほとんど区別がつかないため,以前は同一と見なされていた.しかし,遺伝子的にはそれぞれ異なっており,強い宿主特異性(例えばラットから分離されたものはラットにのみ感染し,ヒトには感染しない)があることが明らかとなってきた.そのため,これまで一属一種としてPneumocystis cariniiと称されてきたのをそれぞれに種の名前を付し,ヒトに感染するものはPneumocystis jiroveciiと命名された2)(P. cariniiは最初にラットから分離されたものにつけられた名前であることから,ラットのPneumocystisの種名となった).Jiroveciiは初めてヒトから本菌を見いだしたOtto Jirovecの名前に由来し,yee-row-vet-zeeと発音する.真菌の名前として最後に-ciiとiを2つ重ねるのが正式名となっている.
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