映画に学ぶ疾患
「ゴースト」―再生医療
安東 由喜雄
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部病態情報解析学分野
pp.834
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102028
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不老不死の薬を作ろうとする無駄な努力は,古くは秦の始皇帝に始まり現代につながる.アンチエイジングなる学問が盛んに行われているが,人はいつかは死を受け入れなければならない.それはヒトという生命体にセットされた必然現象である.しかし事件,事故によって突然失われつつある命,臓器はどんなことをしても一度は元に戻さなければ,家族の心の整理ができないというものだ.最近までES細胞を利用し,様々な方法を介して目的の臓器に分化させる試みが行われてきたが,この研究にはヒトの受精細胞を用いる必要があり,今の倫理規定では実用化は難しいと考えられている.
ところが,京都大学の山中伸弥教授は,いくつかの工夫を凝らし,この問題をあっさりクリアしてしまった.山中教授はヒトの皮膚の細胞を使ってiPS細胞と呼ばれる細胞を世界で初めて開発した.iPS細胞とは,線維芽細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより得られた,すべての細胞に分化可能な分化万能性を持った細胞をいう.山中教授はこの発見で一躍「時の人」になった.
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