今月の主題 ウイルス感染症─最新の動向
話題
世界的に使われているロタウイルスワクチン
中込 とよ子
1
,
中込 治
1
Toyoko NAKAGOMI
1
,
Osamu NAKAGOMI
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座
キーワード:
ロタウイルス性胃腸炎
,
血清型(遺伝子型)
,
疾病負担
Keyword:
ロタウイルス性胃腸炎
,
血清型(遺伝子型)
,
疾病負担
pp.111-116
発行日 2009年1月15日
Published Date 2009/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101871
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1.はじめに
ロタウイルス胃腸炎は毎年冬から春先にかけて乳幼児を中心に流行する(図1)1,2).嘔吐,発熱,下痢を主症状とし,ほとんどの乳幼児が3歳ごろまでに一度は罹患する.症例の2~3%に強い脱水症状が現れ,適切な医療が施されなければ生命にかかわることのある侮れない病気である.このように入院加療が必要な胃腸炎の症例の約半数はロタウイルスが原因であることが知られている2,3).発展途上国に目を転じると,社会基盤が脆弱で医療へのアクセスが悪いために,ロタウイルスは5歳未満の小児死亡の大きな原因である(図2)4).このためロタウイルスワクチンによる予防介入戦略が世界保健機関をはじめとする国際組織の優先課題になっている.すでに安全で有効性の高いロタウイルスワクチンが開発され,世界100か国以上で認可されている5,6)(図3).また,アメリカ合衆国,中南米(ブラジル,メキシコ,ニカラグアなど7か国),ヨーロッパ(ベルギー,ルクセンブルグ,オーストリア),オーストラリアなど世界12か国では乳幼児の定期予防接種に導入されている.
本稿では,世界的に使われているロタウイルスワクチンの特徴と課題について解説する.
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