連載 All about 日本のワクチン・11
ロタウイルスワクチン
高梨 さやか
1
1国立感染症研究所感染症疫学センター
pp.1141-1145
発行日 2023年11月15日
Published Date 2023/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401210176
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1.当該疾患の発生動向
ロタウイルス胃腸炎は5歳までにほとんどの児が罹患するとされている。わが国では、5類小児科定点把握対象疾患である「感染性胃腸炎」として他の病原体による胃腸炎と共に全国約3,000の小児科定点から報告されている。従来、年末から年頭にかけてのピークがノロウイルスに、3-5月のピークがロタウイルスによるものと考えられてきた。2020年の年末および2021年は明らかなピークが認められず、新型コロナウイルス感染症の対策のため、胃腸炎の流行も全般的に抑えられた可能性が指摘されている。2023年に入り、徐々に報告数がコロナ流行前に近づいてきている。
ロタウイルス胃腸炎の重症例を把握するサーベイランスとして2013年10月から「感染性胃腸炎(病原体がロタウイルスであるものに限る。)」が開始された。全国約500の基幹定点医療機関からの報告結果を図11)に示すが、2020年以降2023年20週現在まで、報告数が非常に少ない状態が持続している。ロタウイルスはウイルス粒子の内殻蛋白であるVP6の抗原性の違いでA〜J群に分類されるが、ヒトから検出される大部分を占めるのはA群である。外郭蛋白の中和抗原であるVP7(G遺伝子型)とVP4(P遺伝子型)の組み合わせで分類され、各国の分子疫学調査により、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]の五つの組み合わせで70%以上を占めることが報告されてきた2)。日本においてもこの組み合わせが大部分を占めていたが、ワクチン導入後は、DS1様G1P[8]株3)やG8P[8]4)など新規流行株も検出されている。
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.