今月の主題 胎盤
巻頭言
胎盤―その生理と病態
水谷 栄彦
1
Shigehiko MIZUTANI
1
1名古屋大学医学部プロテアーゼ臨床応用学(グッドマン)寄附講座
pp.1641-1642
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101380
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少子化の時代を迎え,周産期医療に求められるものは,より良い次の世代の誕生に,いかに貢献できるかであろう.本誌「臨床検査」で胎盤が取り上げられる意味の1つは,そのあたりにあると思われる.また,近年周産期医療,とくに産科領域では,妊産婦管理は,手軽に応用できるME(medical electronics;超音波診断)が主流を占めており,生化学的な臨床検査が疎かにされていることへの警鐘の意味も在るのかもしれない.現在,広く臨床の場に導入されているMEによる診断法は,確かに患者へ侵襲が少なく手軽に行えるし,またその医療経済的な意義も大きい(患者には負担となる).しかしながら,MEによる診断は,基本的には生理・病態の変化(結果)を捉えているのみで,その背後にある,生理・病態を制御する本態を捉えるものではない.
胚は,胎児と胎盤に分かれるが,機能的にはこの両者が一体となって,母体の中で(胎盤を接点として),短期間に発育・成熟する.妊娠は,ヒトの最も基本的な生命現象であり,精子と卵子の合体(受精)から,わずか280日で約3kgの胎児と,約0.5kgの胎盤が作られるという驚異的な生理現象である.したがって,妊娠の生理変化には,非妊娠時(日常的)の生理変化が大きく増幅され表現されていると言えよう.妊娠の生理・病態の解明は,あらゆるヒトの生理・病態の解明の鍵になると思われる.妊娠時にしか存在しない臓器である胎盤は,妊娠の生理・病態を解明する鍵と言えよう.
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