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1.はじめに
全身の脂肪分布を評価する方法としては,体密度測定法1)や体水分測定法に代表されるような体の成分を脂肪組織と除脂肪組織(lean body mass;LBM)の二つで構成されると考えた2成分モデル(2-compartment model)解析があり,50年以上前から体組成評価の研究分野に用いられてきた.この2成分モデル解析は,LBMの密度や水分量などを一定と仮定し体脂肪量を算出している.これらの因子は加齢,性別,人種などによって異なり計測値に誤差を生じやすく,近年では体組成を原子,分子,細胞,組織の各レベルで解析を行う,多成分モデル(multi-compartment model)による体組成分析法も報告され2),正確性の向上も図られてきている.一方,この体組成評価に関係した放射線や医用画像が使用されるきっかけとなったのは,1982年にわれわれが世界で初めて,X線CT画像を使用しその断面像から直接的に脂肪組織の面積を測定し,全身の脂肪量を求めた方法である3,4).本法は体脂肪量を求めるため全身を頭部,上腕(左右),前腕(左右),胸部,腹部,大腿(左右),下腿(左右)の11の円柱と仮定し,それぞれの中点の脂肪面積値と各部の長さを乗じ,その総和を求めることによって得られる4)(図1).また,このスライス幅を狭くしより多数の断面像を撮像した画像より求めた脂肪量と,各部位単スライスより求めた脂肪量ではほぼ同様の測定結果が得られることも確認されている.X線CT画像を用いた方法の特徴は,全身の脂肪量測定と同時に身体各部位の正確な脂肪量の測定が可能になったことである.特に腹部においては内臓脂肪(visceral fat)と皮下脂肪(subcutaneous fat)を区別して計測できるようになった点である.このことから,現在の診療・研究において重要な「内臓脂肪型肥満」(図2)の概念が確立された.現在,腹部脂肪分布評価に関する方法としては,二重エネルギーX線吸収法(dual energy X-ray absorptiometry;DEXA・DXA)5),超音波法(ultrasound diagnosis)6),MRI法7)などを用いた方法が報告されているが,わが国においては普及台数,脂肪計測自体の測定意義の確立,測定精度,ソフトの開発状況などの点においてCT装置を用いた計測が一般的であり,“golden standard”となりうると考えられる.本稿では,内臓脂肪の画像診断について解説する.
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