学会だより 第48回日本臨床細胞学会総会
今後の子宮癌検診の方向性について
片岡 秀夫
1
1彦根市立病院臨床検査科
pp.1146
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101347
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本学会のテーマは「臨床細胞学―より高きものをめざして」である.学会長が命名したとおり,細胞診断学は,①体から自然に剥がれ落ちた細胞を集め診断する剥離細胞診,②目的の部位を擦過し細胞を採取して診断する擦過細胞診,そして,③体の中の目的の臓器や腫瘤に対して針を刺し,特定の部位より細胞を採取し診断する穿刺吸引細胞診と大きく内容が広がってきた.近年,一応の細胞診断が確立したといえる段階に近づいたと思われるが,さらに免疫組織化学が加わったことで細胞の由来等の検索が容易になり,今後は遺伝子検索の方法が加わることが予想される.
子宮癌検診における細胞診の重要性はいうまでもないが,日本における子宮癌検診の大きな問題点の1つは,受診率が欧米の約80%に比べ,日本は13~20%と非常に低いことであり,さらにその受診者は比較的同じ人が受診しているという事実である.したがって,子宮癌検診の早期発見において非常に有効な手段であるはずの細胞診も,近年陽性率は低下傾向である.また,今1つの問題は,仮に受診率が上がった際にその検体を診断する細胞検査士が少ないことも解決しなければならない問題である.結果として8割を超える検診を受けない人たちの子宮癌発生により,1990年頃までは減少傾向であった子宮癌死亡者数も,現在は平行に推移していることも理解しやすい.
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