今月の表紙 電気泳動の解析シリーズ・1
リポ蛋白の異常症例
塚本 秀子
1
1慶應義塾大学医学部中央臨床検査部
pp.4-6
発行日 2003年1月15日
Published Date 2003/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101155
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臨床検査の日常分析のなかから,今回リポ蛋白の電気泳動で異常パターンを呈した低脂血症(症例1)と高脂血症・高カイロミクロン血症(症例2)を紹介する.
1.低脂血症(症例1)
17歳・女子高生.12歳時から野菜中心の食事をするようになり偏食を続けた.16歳ころから体重減少が目立ち,17歳の時,感冒で近くの医院を受診し,極度のるい痩を指摘された.偏食を続けるうちに自力歩行が困難となり当院精神科に全身管理の目的で入院した(入院時,身長161cm,体重25.5kg,BMI9.6).
リポ蛋白泳動パターン(図1,2)と検査データ(表1)を示した.入院時,リポ蛋白による電気泳動では,αリポ蛋白のみで,βリポ,pre -βリポ蛋白はほとんど観察されず無βリポ蛋白を思わせた.また,TG4mg/dl,アポB4mg/dlと極度に低値を示した.末梢血では多数のacanthocytosisが出現した.中心静脈栄養と経口摂取を開始し,図1の経時観察で示したように,順次pre-β,βリポは増加しTC,TG,アポBも増加した.HDL-Cは低下した.acanthocytosisも減少した.退院時55日目には体重36.5kg,BMI13.7まで回復し自力歩行も可能となり,データも正常にもどった.
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