今月の表紙 電気泳動の解析シリーズ・11
抗イディオタイプ抗体によりLD結合能が阻害されないIgG1型M蛋白
藤田 清貴
1
1信州大学医学部保健学科
pp.1476
発行日 2003年11月15日
Published Date 2003/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101057
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近年,血清中に存在する酵素蛋白と免疫グロブリンが結合する例が多数報告されるようになり,その臨床的意義について注目されている.しかし,酵素結合性免疫グロブリンを自己抗体と考えるか否か,またある特定の病態との関連性はあるのかどうか,十分な結論は得られていない.また,酵素と結合する免疫グロブリンが血中に存在すると,酵素活性は低活性異常として見いだされる例も稀に認められるが,病態を反映しない高活性異常として観察される場合が多く誤診につながる可能性も高い.特に,乳酸脱水素酵素(LD, E. C. 1.1.1.27)と結合する免疫グロブリン例では,高分子型LDが見いだされない例,NAD+などの補酵素により容易に解離する例などが存在し,その多様性がうかがわれる.
図1に80歳,男性のアガロースゲルを支持体とする蛋白電気泳動およびLDアイソザイムパターンを示す.症例1)は腰痛を主訴として来院した患者である.入院時の検査では,血清蛋白分画でslow-γ位にM蛋白を認め,免疫電気泳動法によりIgG1-λ型と同定された.しかし,臨床所見やM蛋白以外の正常免疫グロブリンであるIgA, IgMは減少していないことから良性M蛋白血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance;MGUS)と診断された.血清LD活性は271IU/Lと基準範囲内であったが,LDアイソザイム分析ではLD2,3,4の陰極寄りとLD5にかけてのtailingが認められた.
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