今月の主題 聴覚障害とその診断
話題
埋込み型補聴器の現状
小川 郁
1
Kaoru OGAWA
1
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科
キーワード:
埋込み型補聴器
,
人工中耳
,
感音難聴
Keyword:
埋込み型補聴器
,
人工中耳
,
感音難聴
pp.1173-1176
発行日 2003年10月15日
Published Date 2003/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100999
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1.はじめに
日本は世界にも類をみない高齢化社会を迎えようとしているが,加齢による難聴を含めて補聴器装用が必要な難聴者の数も急激に増加している.しかし,米国での大規模な調査でも補聴器装用の必要な難聴者の一部しか日常的に補聴器を装用していない実態が明らかとなったように1),現在用いられている補聴器の多くは難聴者の期待するクオリティには達していない.このような補聴器の問題点として,補聴器そのものの補聴効果にかかわる問題と,装用感や美容など補聴効果以外の問題が指摘されている.補聴器の電子工学的特性に関しては,近年の電子工学技術の進歩による補聴器の小型化やデジタル化によって解決されてきた問題も少なくないが,補聴器が音響信号を電気的に増幅して再び空気の振動として出力して鼓膜を振動させるものであり,いかに信号をデジタル処理しても最終的には再度空気の振動として出力することになり,この際に回避できない様々な音響歪みが発生するという限界がある.このような補聴器の音響信号変換様式を根本的に変えて,さらに体内に埋込むことによって装用感や美容上の問題をも解決しようとした補聴器が埋込み型補聴器(implantable hearing aid)または人工中耳(middle ear implant)である. 以下,これら埋込み型補聴器の現状について概説する.
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