今月の主題 聴覚障害とその診断
話題
聴性脳幹インプラントの現在と将来
熊川 孝三
1
,
関 要次郎
2
Kozo KUMAKAWA
1
,
Yojiro SEKI
2
1虎の門病院耳鼻咽喉科
2東京共済病院脳神経外科
キーワード:
聴神経腫瘍
,
蝸牛神経核
,
聴性脳幹インプラント
Keyword:
聴神経腫瘍
,
蝸牛神経核
,
聴性脳幹インプラント
pp.1170-1172
発行日 2003年10月15日
Published Date 2003/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100998
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1.はじめに
内耳よりさらに中枢の聴神経が障害された高度感音難聴については,人工内耳を埋め込んでも効果が得られない.しかし現在,このような聴神経性難聴の外科的治療法もすでに可能になっている.
その方法は,聴神経よりも脳の聴覚中枢に近い蝸牛神経核(延髄での聴覚ニューロンの中継核)の表面に電極を置いて固定し,神経核を直接に電気刺激して聴覚を取り戻すというもので,われわれは聴性脳幹インプラント(auditory brainstem implant,以下ABIと略す)と呼んでいる.
これはアメリカの脳外科医であるHitselbergerによって考案され,1979年に両側の聴神経腫瘍を有する神経線維腫症第2型の患者に第1例目の埋め込み手術が行われた1).その後,人工内耳の改良とともにABIについても多チャンネル化が図られた.現在,Cochlea社製Nuclues 24ABI(24チャンネル)とMED-EL社製Combi 40+ABI(12チャンネル)の2種類がある.わが国ではわれわれが行った2例のみで,まだ保険適用はなされていない.
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