シリーズ最新医学講座・Ⅱ 病理診断に役立つ分子病理学・11
細胞診標本を用いた癌の遺伝子診断
津田 均
1
Hitoshi TSUDA
1
1防衛医科大学校第二病理
キーワード:
遺伝子
,
染色体変化
,
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
,
乳腺腫瘍
Keyword:
遺伝子
,
染色体変化
,
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
,
乳腺腫瘍
pp.1565-1571
発行日 2004年11月15日
Published Date 2004/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100633
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
癌の細胞診断は各種の臓器でその診断体系が確立しているが,一部の臓器や検体ではいまだに診断が難しいものがある.一方,病理診断がそうであるように,細胞診断においても良悪性診断や病変の存在診断のみならず,種々の治療適応の決定や治療効果予測などの診断が求められることも予想される.
近年,癌細胞における数々の遺伝子や染色体変化が明らかにされた.個々の腫瘍はクローナルな細胞の集団であり,その構成細胞間では基本的な遺伝子・染色体変化のパターンは原則的に同一である.これらの情報を個々の癌の指紋として利用し,細胞診標本に応用すれば,従来以上の豊富な情報が得られ診療上有用であろう.特に,形態学的に細胞診断のみでは不十分とみられる領域の検体に対して,遺伝子・染色体検索で異常細胞の有無やその由来を定量的かつ客観的に診断できれば,細胞診との補完で正確なスクリーニングや診断が可能となる.本稿では固形癌のなかから,乳腺,子宮内膜,喀痰,尿,糞便,体腔液,子宮腟部,膵液・胆汁に関し,諸家の研究成果を示し,今後の診療適用について展望と問題点について考えてみたい.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.