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1.はじめに
過日,フランスのロワール地方を訪れた際,地平線の彼方まで一面に広がるぶどう畑の,一定間隔に1本ずつ植えられたバラに興味をもち,その理由を聞くと,「甘いぶどうには虫が付く.が,その前にまずバラに虫が寄る.よって,毎日このバラだけを監視していれば,ぶどうの虫害を予防,早期に発見できるのです」と…何世紀にもわたって獲得した農民の深い防疫の知恵を垣間見た思いであった.
このような話は以前にも聞いてはいたが,目の当たりにその効用を聞かされたとき,なにごとであれ「われわれは,早く知り,対処したいのだ」という願望の強さこそが文明,文化の発展の律速なのか,との感慨を禁じえなかった.
事足りた今,「健康と長寿」が国民の最大の関心事であり,セルフメディケーション,すなわち,自分の体は「自己責任」で健康管理をする,とはいわれつつも,勤務状況から病院に行く時間のない人々が多いのが現状であり,また,前立腺癌・婦人科・性病関連の疾病で病院に行くにはその敷居が高いことも事実である.
加えて,国民皆保険とはいえ,保険診療の自己負担比率は今後も向上していくとみられ,いつまでも保険診療のほうが経済性に優れるとはいえない時代が到来しつつある.
このようないわゆる「社会現象」の変遷のなかに浮上してきたのが,「いつでも,どこでも,より早く」自己の健康状態または疾病の有無を「数値」と「医療機関のコメント」付きで知り,対処することができ,しかも,異常値を得たときは提携先の専門病院への受診勧告と紹介状を得られる「郵送健診」といえよう.
なお,この郵送健診は,歴史的には植田らが1986年に開始した「大腸がん郵便検診(R)システム」にそのルーツを求めることができる1).
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