今月の主題 アルブミン
巻頭言
今なぜアルブミンか
渡辺 明治
1
Akiharu WATANABE
1
1富山医科薬科大学第三内科
pp.499-500
発行日 2004年5月15日
Published Date 2004/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100488
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血清アルブミン濃度が低下した状態を低アルブミン血症と呼ぶが,これには多くの疾患が該当する.栄養素の摂取量や吸収不良による栄養不足,悪液質,消化不良症候群,肝でのアルブミン合成能が低下する劇症肝炎や肝硬変などの肝疾患,まれに先天性無アルブミン血症や異常アルブミン血症がみられる.さらに,アルブミンの体外への喪失・漏出はネフローゼ症候群,糸球体腎炎,糖尿病腎症,蛋白漏出性胃腸症などでみられ,アルブミンの異化の亢進による低アルブミン血症には全身感染症,慢性消耗性疾患,代謝亢進が,アルブミンの体内分布の異常(血管内から血管外への移動)として全身の浮腫,腹水や胸水などの体腔液の貯留が挙げられる.なお,慢性疾患の他にも,出血性・外傷性ショックや熱傷などの急性疾患でも血清アルブミン濃度は低下する.
血清アルブミン濃度の測定法は時代の変遷をたどって今日わが国ではオートアナライザー(色素結合)法が一般化され,ブロムクレゾールグリーン(BCG)法またはブロムクレゾールパープル(BCP)法が広く使われている.最近ようやく,標準ヒト血清アルブミンが一般化されようとしており,その正常値や低アルブミン血症の定義も明確になるものと期待される.近年,肝疾患例でみられる低アルブミン血症に対して分岐鎖アミノ酸製剤が用いられるようになり,肝での合成能を促進することにより低アルブミン血症が改善する.アルブミン濃度は予後を予測する指標として重視されており,たとえ0.1g/dlであれその増減の臨床的意義は極めて大きい.したがって,そのわずかな変化が正確に検出でき,施設間での測定値の相違を減らすことが急務となった.
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