今月の主題 脳脊髄液
症例
アトピー性脊髄炎の髄液所見
小副川 学
1
,
吉良 潤一
1
Manabu OSOEGAWA
1
,
Junichi KIRA
1
1九州大学大学院医学研究院神経内科学
キーワード:
アトピー性脊髄炎
,
寄生虫性脊髄炎
,
Th1/Th2
Keyword:
アトピー性脊髄炎
,
寄生虫性脊髄炎
,
Th1/Th2
pp.435-438
発行日 2005年4月15日
Published Date 2005/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100135
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1. はじめに
アトピーとは,ダニやスギ花粉などの環境中に普遍的に存在する抗原に対して高IgE応答を呈する状態をいう.これら種々のアレルゲンに対するアトピーを基盤として,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患を生じる.これまでアトピーに伴って脊髄炎が起こることを指摘した報告はなかったが,われわれは成人のアトピー性皮膚炎患者で頸髄炎がみられることを明らかにした1).また,脊髄炎において血清全IgEおよびアレルゲン特異的IgEが健常対照より有意に高値であることを見出した.そこでわれわれは,アトピーを基盤として脊髄に炎症を生じる病態があるのではないかと考え,アトピー性脊髄炎(atopic myelitis;AM)との病名を提唱している2~4).アトピー素因と脊髄炎の発生に何らかの関連があることをわれわれが報告して以来,他施設からも同様の症例報告が相次いでおり,全国的に類似の症例が分布していると指摘されている5).一方,われわれはイヌ回虫やブタ回虫による,全身症状を欠くか乏しい寄生虫性脊髄炎(parasite myelitis;PM)の存在を報告している6,7).PMにおいては症状が軽微である点,末梢血にて高IgE血症を呈することが多く,Th2にシフトしている点などAMの類似点があり,鑑別が必要となる.そこで本稿では,アトピー性疾患後に生じる脊髄炎(AM)について概説すると同時に,髄液上の両疾患の鑑別に関して述べる.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.