今月の主題 花粉症克服への展望
話題
スギ花粉症に対する抗原特異的免疫療法
大久保 公裕
1
,
後藤 穣
1
Kimihiro OHKUBO
1
,
Minoru GOTO
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科
キーワード:
減感作療法
,
アレルギー性鼻炎
,
アナフィラキシー
Keyword:
減感作療法
,
アレルギー性鼻炎
,
アナフィラキシー
pp.189-193
発行日 2006年2月15日
Published Date 2006/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100028
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1.はじめに
スギ花粉症は,国民病とも呼ばれるⅠ型アレルギーの代表的疾患である.その本態は季節性アレルギー性鼻炎・結膜炎であり,内科,耳鼻科,眼科を問わずに積極的に治療が行われている.しかし,行われている治療は多くが薬物療法であり,対症療法である.本来のアレルギー治療の基本はアレルゲンの除去,回避であるが,花粉症の場合,完全に行うことは不可能であり,過度の抗原暴露が生じると症状が出現する.現在は抗原特異的免疫療法Ag-ITが唯一,アレルギー疾患に対する根本的な治療法であり,治癒させうる治療法と認識されている.
Ag-ITは1911年にNoonによって米国に紹介されて以来1),現在まで続いている治療法で,日本より欧米でその評価が高い2).また,日本においては通年性アレルギー性鼻炎に対し,その高い治療効果が認められているが,スギ花粉症に対しての効果が低かった.これは従来品であるスギ治療用エキスの力価が低かったためと考えられている.それでも当科のアンケートの調査ではAg-IT終了後,花粉症の症状は約60%が軽快したと答えている3).現在は,わが国でも唯一の標準化エキスである標準化アレルゲン治療エキス“トリイ”スギ花粉(標準化スギ花粉エキス)が作成され,過去のこの力価の問題を解決している.
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