連載 事例による医療監視・指導・23〈最終回〉
信頼に基づく医療の重要性
桜山 豊夫
1,2
1前東京都衛生局医療計画部医務指導課
2八王子保健所
pp.1066-1067
発行日 2001年12月1日
Published Date 2001/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903438
- 有料閲覧
- 文献概要
私事で恐縮ですが,家で飼っていた3か月の子猫が死にました.妻が道端で拾って,ピッコロと名づけられたその猫は,呼吸困難を繰り返したため,懇意にしている獣医さんの診察を受け,横隔膜ヘルニアで,腸管のほとんどが胸腔内に脱出していることが判明し,手術を勧められました.比較的元気にしていたのですが,そう難しくない手術ということで手術を受けました.ところが予想以上に肝臓と横隔膜の癒着が激しく,剥離中に心停止を来して術中死したものです.たかが子猫の死というものの,内田百間の「ノラや」ではありませんが,気分は千々に乱れます.
筆者は,獣医学は専門ではないものの,その周辺領域でもある医学を一応は学んでおり,一般の患者(患畜?)のご家族よりは手術に伴う危険も認識していたと思います.また執刀してくださった獣医さんは以前から懇意にしており,十分に信頼を置いています.知識もあり,主治医との信頼関係があっても,しかし,それでもなお気分は乱れるのです.保存的治療を選択すべきではなかったか.手術の時期は適切だったか.無理に剥離しないで閉じるべきではなかったか…….
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.