医療従事者のための医療倫理学入門
19.HIV感染症の診療に伴う医療倫理的問題
大西 基喜
1
,
浅井 篤
2
,
福井 次矢
3
1京都大学医学部附属病院総合診療部
2京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学
3京都大学大学院医学研究科社会健康医学系臨床疫学
pp.733-735
発行日 2001年8月1日
Published Date 2001/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903353
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〔ケース〕
HIV陽性者として,外来で経過観察されていたKさん(44歳,男性)が吐血した.通院していたA病院はHIV患者を入院させる態勢にないとして,地域のB中核病院に搬送した.そこもHIV感染症は拠点病院に送るのを原則としていたが,Kさんは出血性のショックを起こしているため緊急入院させた.緊急内視鏡はHIV患者には適さないとされ,胃潰瘍の暫定診断で消化器病棟に入院した.Kさんは同性愛者で,1年前にたまたまHIV陽性が判明していた.Y研修医は担当医になるよう指導医からいわれたが,どうにも不快な感じを払拭できなかった.漠然と同性愛やそれと関連する感染に嫌悪感を感じ,かつその感染症のために自らの感染の危険まで冒さなければならないことが納得できなかった.結局,自分の気持ちを整理しきれないまま,異例にも,指導医に担当変更を申し入れてしまった.
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