特集 医療保障のグランドデザイン
グローバライゼーションと社会保障の統合—地球化時代の福祉国家とは
広井 良典
1
1千葉大学法経学部経済学科
pp.44-46
発行日 1999年1月1日
Published Date 1999/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902596
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現在そして今後における福祉国家の意味を考えるとき,忘れてはならないのは,福祉国家が前提とする「国家」そのものの意味が,様々な局面において大きく揺らいでいる,という点である.
もともと,われわれが通常イメージする「国家」というものは,それ自体歴史的には比較的「最近」の産物に過ぎない.つまり,「歴史家が広く認めているように,国民国家あるいは近代主権国家とは,16世紀頃からの西ヨーロッパに固有な歴史的現象であって,nation, sovereign state(主権国家),territorial state (領土国家)の三つが一致している特殊な状態をさす」(村上泰亮『反古典の政治経済学(上)』).また,より身近なところでは,司馬遼太郎氏の次のような言葉がこの文脈に当てはまる.「日本人というのは明治以前には“国民”であったことはなく,国家という観念をほとんどもつことなくすごしてきた.かれらは,村落か藩かせいぜい分国の住民であったが,維新によってはじめてヨーロッパの概念における“国家”というひどくモダンなものをもったのである」(『坂の上の雲』(二)).
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