特集 介護保険制度をめぐって
医療機関・施設における介護の国際比較
黒田 研二
1
1大阪府立大学社会福祉学部
pp.949-954
発行日 1996年10月1日
Published Date 1996/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901931
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介護の国際比較
介護保険制度導入の議論とのからみで,しだいに介護という概念がクロースアップされてきた.介護保険制度は,現在,医療と福祉の体系の中で対応されている各種のサービスのうち,要介護の高齢者へのケア・サービスを一元的な費用体系のもとで提供できるよう,制度の組み替えを図ろうとしているところにポイントがある.つまり,従来,医療や福祉サービスに含まれている長期ケアの要素が,介護という概念で包括されようとしているともいえる.この場合の介護とは,医療的ケア,リハビリテーション,看護および対人的ケア,福祉用具の提供,さらに施設や住居といった環境の整備までを含む広い概念である.
介護の国際比較を行う際,留意すべき点がいくつかある.社会的介護にかかわる政策は,医療,福祉さらには住宅といった分野にまたがって施策化されている.この点は日本および先進諸外国において事情は同様だが,どの分野でどのような対応が図られているかは国によって異なる.例えば,ナーシングホームは米国ではメディケアやメディケイドからも費用が支出されており,医療の体系の一部とみなしうるが,デンマークでは福祉サービスの一部である.スウェーデンでは,これまで医療体系の中で県がナーシングホームを管轄していたが,1992年のエーデル改革によって市の管轄へと移行され,福祉サービスと一体化された.
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